腐りかけのお肉が美味しいと言われるのは本当なのか?
肉屋の店長が解説します
腐りかけのお肉が美味しいと言われる理由
果物が熟して甘くなるのと同じ理由です
屠畜してすぐのお肉は青いミカンのような感じです
日が経つとお肉も同じように熟成します
「大きな塊のお肉を熟成させることで柔らかく美味しくなる」というのが理由です
しかし全てのお肉が熟成して美味しくなる訳ではありません
あてはまらない物
スーパーや精肉店で並べられているお肉
スライスや焼肉用は「腐りかけが美味しい」に、あてはまりません
もちろん切りたての状態から熟成はしますが
消費者に販売される状態。
小さくなったお肉は何日ではなく数十分で熟成します
ブルーミング
切りたてのお肉は黒い色をしています
先ほど言ったように「青いミカン」の状態です
下の画像は切りたてのお肉と
時間が経ったお肉との比較です
数十分で赤い色に発色した状態になります
この赤くなる現象をブルーミング現象と言われ
ブルーミングしたもの=熟成した状態です
左側の黒いお肉が切りたてで、右側の明るいお肉がブルーミング後です
時間が経つと下の画像のように同じ色に変わります
大きな塊のお肉で有効
このようにスーパーや精肉店で並んでいるお肉は
「既に熟成した状態です」
腐りかけのお肉が美味しいと言われるお肉は
「大きな塊のお肉」の場合に限ります
大きな塊(少なくとも5kg以上)を冷蔵庫で熟成させてこそ効果が出ます
わざと遅らせて食べるのは危険
一般に販売されている、すき焼き用や焼肉用は数時間で熟成するため
「腐りかけのお肉は美味しい」にあてはまりません
わざと遅らせて食べるのは間違いです
表示されている消費期限を守りましょう
熟成の日数は?
基本スーパーや精肉店に並んでいるお肉は
屠畜をされてから7~20日のものがほとんどです
熟成であって「腐りかけの状態」ではありません
では「腐りかけのお肉が美味しい」と言われるお肉はどんなものなのか?
熟成肉
みなさん「熟成肉」というものを聞いたことがあると思います
今では全国に熟成肉を扱うお店がたくさんあります
大きな塊の状態で温度と湿度を管理して長期間熟成させます
長期間低温で熟成させることで「やわらかくなり、旨味が増す」と言われています
アミノ酸が増えることで旨味が増すとよく言われていますが、
近年では加熱をすることで香りが良くなり、それが美味しい理由とも言われています
熟成肉はドライエイジング・ウエットエイジングなど様々な方法があります
熟成肉=何日という定義はありません。
10日もあれば30日もあり、いろいろです
管理の上、長期間熟成したのち外側の悪くなった部分を除去します
そして「中の熟成したものを食べる」これが「腐りかけのお肉が美味しい」と言われるお肉です
赤身肉がより有効
この「腐りかけのお肉が美味しい」が言われるようになったのはかなり昔の話で
昔のお肉は和牛であっても今のように柔らかく霜降りでもありません
どちらかと言えば赤身で硬いお肉です。
その赤身の硬いお肉を美味しく食べるために熟成させ、美味しく食べるというものが始まったのではないかと。
現在の和牛は日々改良され昔に比べ、熟成させなくとも柔らかく美味しいものがたくさんあります。
熟成肉は水分が少なくなりロスがでます。また長期間保存することで販売価格も上がります。
元々美味しいお肉をわざわざ熟成させる必要はあるのか?
これは個々の価値観によって変わりますが、アンガス牛であったり赤牛のような赤身のお肉でこそ本来の効果が発揮されるのではないでしょうか。
まとめ
腐りかけのお肉が何故美味しいと言われるのかを解説してきました
表面の言葉だけで、買ってきたお肉を古くさせたほうが良いと思っている方もたくさんおられます
枝肉(半頭の骨付き)や大きな塊を十分な管理の上で熟成させたものが本来の意味です。
繰り返しになりますが、買ったお肉をわざと置くのはやめましょう